木架構

人・建築設計所では、大規模木造(都市木造)の設計を行っています。

先日、野沢正光さんの記事でも触れましたが、大断面集成材を使った大規模木造のシステム化を開発していたことから、私どもは大規模な木造というのに対しての知識が揃っています。

そのような事務所であるため、一般的な設計事務所では取り組めないような、こうした設計もできるのです。

実は、いま現在も大規模木造の計画が進んでおります。

昨日ですが、木架構の打ち合わせを行い、プレカット加工会社が接合金物のカタログを持ってきてくださいました。
この中に実例が載っているものがあり、その1件が私どもの設計した物件が載っているとは、まさか思いもしてなかったと思います。

浜松市の設計事務所の中でも、全国的にも、先進的な設計事務所であることは、間違いない事実です。


そんな設計事務所が、住宅でも非住宅でもお役に立ちたいと思っています。
ハウスメーカーや、建設会社に不信感を持ってしまったお客様もご相談に乗ります。

リノベ実践1

人・建築設計所は、2023年4月に新事務所をリノベーションでオープンしました。

2022年11月にスタートした新事務所の計画は、まずは物件探しです。
土地の購入、建物や部屋の賃貸、シェアオフィスなど、検証しながら進めました。
例えば、土地の購入では、建物の建設に時間がかかりすぎるので、プレハブのオフィスを置いて、徐々に新築するなど検討していました。

そんなことで2ヶ月ほど検索や問い合わせなど具体的に進めていたところ、2023年1月に旧知の建築写真家の上田明さんに、Macの具合を見て欲しいと言われて出かけ、ふと頭に「スタジオの2階が以前事務所で貸してた」ということを思い出しました。
ダメもとで「上の事務所って空いてる?」と聞くと、空いてるというので、早速見せてもらいました。

荷物こそあれ、空間が面白いし、何よりリノベの許可も得られたので、これはお願いするしかないと確信しました。
(つづく)

モデュロール

毎週木曜日は、書棚から本を紹介します。

その記念すべき1回目の本は、ル・コルビュジェ著で吉阪隆正が訳した書籍です。
真っ黒な装丁のこの本は、SD選書という鹿島出版会の建築専門書。
270以上もあるSD選書の中でも、最も有名な本かもしれません。

建築を学ぶ学生は、教科書で必ずこの書籍のことを学びますが、実際にその本を読んだことのある学生は、一握りもいないかもしれません。

という私も、学生時代に購入し、かなり端折って斜め読みしていました。
特に大切な部分はこの辺り。
黄金比とフィボナッチ数列、人体や生物に隠された数列です。

さて、代表の髙橋はフィボナッチ数列が、その数とその前の数を足していくという特性を利用して、インフィル(内装)・システムの開発を行いました。
その開発したシステムを東京・三田の日本建築学会本部の入る建築会館で記者発表をしました。
そのことが載っている書籍もどこかにありますが、またそのうちに紹介します。

さてさて、そんな記者発表もあって、その原点となったモデュロールについて記事を書くというので、この書籍を貸してありました。

返却して来たメモの中に「長らく」と書いてあるように、下手すると20年以上も貸してあったような…。
夏みかんピール美味しかったんで、許してあげますよ。笑

京唐紙

人・建築設計所では、リノベーション、新築の住宅で時折、京唐紙を使っています。
京都で2軒だけしか作ってない、木版刷りの襖紙で、桂離宮などの建物にも使われています。

代表の髙橋がした仕事で、特に印象に残っているのが、米国のNAHBホームビルダーショーに出展した展示ブースのデザインです。

その展示ブースの家具という家具、展示パネルのバックに京唐紙を貼りまくりました。
アメリカ人が相手ですので、日本の伝統的な模様が鮮烈な印象だったようです。
その展示ブースはもちろん話題となり、現地テレビ局の取材も受けました。

日本人の私たちにも、日本の伝統的なデザインは、いま見ても斬新で、素晴らしいですね。
家紋や紋様など、こうした伝統は大切にしたいです。

建築が人をアフォードする

アフォードという言葉は、耳慣れないかもしれません。

辞書によると「余裕がある、買う余裕がある、持つ余裕がある、差しつかえない、与える、供給する、産する、(…を)与える」とのこと。

このなかでは、一番最後の「〜を与える」が一番近い意味ですが、、、

「建築が人をアフォードする」というのは、建築によって人は、ココロも身体も大きな影響を受けるということ。
大切な人をどのような環境に置きたいか、何を求めて設計するのか。
このことを忘れて、「虚勢のようなデザインや見てくれ」にうつつを抜かしてはならないと考えます。

親戚の大工に頼んで建てた家が年中暗く、基礎もボロボロになって来て、精神的に苦しくなったお客様。デザイン系設計事務所に頼んで、あちこちの雨漏りに苦しんでるお客様。溢れる荷物の量に苦しんでいるお客様。様々な悩みを抱えて来たお客様を私どもでは建築で助けて来ました。

建築でアフォードするという設計思想は、住宅にとどまらず、作業環境を考える工場や事務所、店舗でも求められます。

またもちろん、学習環境を考える学校、児童福祉施設、医療、高齢者福祉施設などの設計にも、共通した設計コンセプトです。

たとえば、木造の体育館に太陽熱を利用した床暖房を取り入れました。
南アルプスの真冬でも、ヒートショックが少なく、筋肉の緊張がゆるみ、そのため安全な建築となりました。

真夏に劣悪な環境となるクリーニング工場に、自然エネルギーを使ったパッシブ換気と、機械を使ったアクティブ換気・冷房・送風の効率よい組み合わせで、作業効率の高い環境をつくりました。

この工場には全国から見学者がお見えになり、体感された方からの依頼で、温熱改修のサポートもしております。

こうした考え方の原点となっているのは、東京藝術大学名誉教授・奥村昭雄氏のところに書生として置かせてもらったことから。

奥村昭雄さんを思い出す会(自由学園明日館にて)

奥村昭雄さんと毎晩のようにお酒を飲みながら、建築はもちろんのこと、あらゆる自然科学の根元を考えられるように伝承され、思考を訓練された結果であると思います。

大谷石

人・建築設計所の設計に使われている大谷石。写真は、赤煉瓦と大谷石とのコンビネーションで、バイオ・エタノール・ストーブの暖炉を作りました。

国内の石材採掘は、輸入建材に押されたり、後継者不足から、廃坑閉山となり極端に減っています。

栃木県産の大谷石は、まだその中でも入手しやすいです。

ちなみに静岡県産の伊豆石は2003年ごろに調べた時には、切り出していないそうで、すでに入手困難でした。

さて、その大谷石。
設計の師匠をたどっていくと繋がります。

米国の建築家フランク・ロイド・ライトが来日して設計した旧帝国ホテル(明治村に玄関ホールが移築されている)の外壁や内装の石材とレンガのコンビネーション。

この石材こそが、大谷石なのです。

火に強く、暖炉などに適した材料。
味噌(石の中に混ざっている礫)がたくさんある部分が特に良いと、わが師匠から教わりました。

石を使う時には、その教えを思い出しながら、「大谷石」と図面に記入しています。

蔵書について

人・建築設計所の新事務所に徐々に運び込んでる建築関連の本たち。このブログでも、紹介していけたらと思います。

蔵書は、代表・髙橋が学生時代から買い揃えたものはもちろん、きのくに子どもの村学園長の堀真一郎さんや、静岡大学の名誉教授の外山知徳さん、そして、名古屋大学名誉教授の平嶋義彦さんからいただいた書籍などもあります。

絶版本などもありますので、私どもの事務所に読書のためにお越しいただいても歓迎します。ホント将来的には、建築ブックカフェ的なものにできたら面白いなとも思っています。いろんな椅子を試せるようなカフェなんて素敵じゃないですか。そんなカフェやりたい方がいたら、お声がけくださいね。

さてさて、今日は書籍を大量に送ってくださった平嶋義彦さんのご紹介をします。代表の高橋とは、とある取材で平嶋さんの別荘を訪れたのが最初だったと記憶しております。

平嶋さんは構造家で、木構造の権威です。1998年、九州で開催された日本建築学会大会にて発表された氏の論文についてお聞きすることが目的で伺いました。専門的なお話しなので、詳しいことは割愛しますが、想像以上に素晴らしい見解を得ることができました。

別荘の建つ白州の「本当に」おいしい水をいただきながら、日本の伝統工法や古代の建築の話になったのも、楽しい思い出です。

その後、浜松市内で建築ゼミが開催され、全国から工務店など100社以上が集まりました。平嶋さんから基調講演があり、人類の歴史的背景や、近代〜現代の日本の建築、そして、これからの木造に期待することをお話しいただきました。

このあとの交流会では、平嶋さんと楽しく建築のお話できて、建築バカぶりをお互い発揮していた記憶が。笑

翌日、代表・髙橋から仕事の実例、設計のメソッド、そして、美しい架構(木組み)の仕組みをお話ししました。発表を準備していると、平嶋さんが「以前、名刺をもらったけど、もう一度もらえるかな」というので名刺を差し上げると、

「実は、ウチに建築の本がたくさんあるんだ。
 いろんな教授の退官記念のものや絶版のもある。
 それを若い世代に譲りたいと思っていたんだけど、
 良かったら貰ってくれるかな。」

一瞬耳を疑いましたが、すぐにその有り難さに気づき、鳥肌が立ちました。

後日、たくさんの書籍とお手紙が届きました。以来たくさんの書籍はいつか若い世代にという思いで私の元にいます。まずはうちの所員からと、このごろは毎朝、本を紹介しているのでした。

省エネ講習会

プロの建設会社や工務店、大工さん、建築士なども、省エネ技術の勉強をしています。

国土交通省は、建築行政を管轄していますが、平成24年より10年間で「新築住宅の全てをエコ住宅にする政策」を展開しました。昨今の地球温暖化問題やCOP xxなどの世界的な流れに従ったのでしょう。

省エネルギー技術の中で、断熱や気密、透湿や防湿、計画換気は、ひとつ間違えると、建築の寿命を縮めてしまいます。たとえば、屋根の野地板の裏に木材が腐るときに出てくるキノコ類が繁殖していたという事例もあります。そのため、設計する人、施工する人、全てに正しく教えることがとても大切なワケです。

静岡県西部地域では省エネ住宅の開発をしていた経験から、私、人・建築設計所の髙橋が講師の一人に任命されており、毎年、講師を務めてきました。

住宅や商業建築を建てる際は、省エネルギーに留意するように法整備化もされてきています。建てる側にとっては、一時的にはコスト負担になると感じるかもしれませんが、長い間使うことを考えたチョイスをお勧めしています。

地震係数 z

初めてブログの記事を書くというのに、ちょっとヘビーな話から。写真は復興中の熊本城(2020年11月撮影)です。

建築基準法に、地震係数zというのがあります。2016年に被災した熊本、大分は0.9〜0.8。これは基準法の求める最低限の耐力を10〜20%下回ってもいいよというもの。

私の住む静岡県では、このzを1.2と定められていて、さらに条例でバラツキ係数1.1を掛けます。

1.2×1.1=1.32。つまり建築基準法の32%以上、丈夫に作りなさいと。これはきたる東海地震に備えてのもの。

また、品確法で定められた耐震等級というものがあります。最高ランクの等級3では、建築基準法と一概には比べられませんが、耐力を建築基準法の1.5倍以上を求められます。

先ほどの0.8と比べると、その差は1.875倍。

単純に必要な壁の長さが、10メートルだとすれば、18.75メートルになります。

何が言いたいかというと、地震係数zの低減、もうやめませんか?