山形県金山町を訪れて 1

山形県金山町で、先週木金と建築の集まりがあり、出掛けてきました。

まずは、建築家、都市計画家が関わり、100年先のまちづくりを目指し、すでに40年が経過しているという町並みを見学しました。

幸いにもガイドに元金山町職員で、中心となって動いていた西田さんがついてくれて、直接、詳しいお話をお聞きすることができました。

構造計算、建築確認や他の行政の対応など、実務的に役に立つ情報を聞けました。

解説などは省きますが、まずは初日の街歩き。秋晴れです。

山形県金山町の中学校は、故・奥村昭雄東京藝術大学名誉教授の作品であり、代表の髙橋貴大がOMソーラーを知るきっかけとなった建築です。

つまり、浜松市に住み、浜松で設計事務所をやることになった大元ともいえます。
(OMソーラーは、浜松市が本社)

今回、念願叶って見学することができました。

竣工からちょうど30年を迎えて、建築としてはその半生まで来ている段階。

現地で、東京藝術大学名誉教授の益子義弘さんの解説を聞くことができました。

益子義弘さんとは、遠くフィンランドの地でご一緒させていただく機会があり、今回、改めてご挨拶させていただきました。

小さな家を考える人へ

小さな暮らしを小さな家でという実例です。

こちらは11坪の別荘ですが、平日は都市部で仕事をして、週末に行くという別荘でした。
それが徐々に手を加えて、外物置などを増築していき、十分ここだけの暮らしができるように、リタイアしてからの暮らしへと徐々に切り替えていくことができました。

ちなみにメインとなる建物はハーフビルドで建築して、付属する建物はセルフビルドしました。

人・建築設計所では、こうした小さな家を多く計画してきました。
たとえば、「22坪の母と娘の家」などでは高齢になった母との暮らしのために小さい土地ながら新築して、快適な暮らしを提供することができました。

また、先日発表した「TinyHouse15 concept」では、15坪で4人の暮らしを提供するとして計画しました。
これには相当なアクロバティックなことが必要かと思われるかもしれませんが、やはりそれはその通りでして、4人暮らしでは4坪追加した19坪のタイプをお勧めします。

さて、ではどれくらいの建物で住宅は満足できるでしょうか。
わかりやすく平屋で考えてみましょう。

LDKのダイニングを希望すると、この例のような3人暮らしで24坪程度の面積が必要となりましょう。
もっと小さく作ることも可能ですが、やはり収納の安心感や使い勝手でいくと、このあたりが秀逸のプランかと思います。

それでもゆとりが欲しいとなると、このような31坪となります。
ただ広さと機能が本当に必要なのか、考えると、小さな暮らしとは言えませんね。
まして予算がぐっとアップすることは確かです。

どう暮らすのが自分の理想なのか、、、。
まずはじっくりと考えてみてはいかがでしょうか。

その上で「プランニングが上手な設計事務所」にお任せください。
こんな設計は、メーカーではできません。

小さな家のすすめ

作品を見ていただくと大きな邸宅や豪邸が目立つかもしれませんが、小さな家をオススメします。

写真は、浜名湖花博2004で展示しました「タイニーハウス」(小さな家)です。週末農業に郊外へでかけて1泊し、また都市部にもどり生活するという、その暮らし方のすすめから静岡新聞賞をいただいた建物になります。設計を担当したのは、私、髙橋貴大で、企画・コンセプト作りから規格住宅化(キット化)までの全てを行いました。

さて実は、世界ではこうしたタイニーハウスが溢れています。これは髙橋が長崎県西海市の依頼でブランド化事業で発表した資料の一部。

週末農業用のラウベ(小舎)を遥かに超えて、その潔さがむしろ贅沢な空間となっています。こうしたブランド化を通じて考えたのは、小さいからこそ贅沢でリッチなものが作れるということ。

こうした小さな家こそ、生活を丁寧に見つめて必要なものだけで満たされ、モノに支配されない家づくりだと確信しました。
たくさんのものを収納しなければならなくなり、家は肥大化しました。江戸時代の長屋暮らしに戻る必要はありませんが、このミニマリズムを住宅でもおすすめします。

どんなものを求めるのかによって、建築は変わります。

住宅を建てるにあたって、あなたの本当の大切を見つめ直してください。

リノベーションとリフォームの違い2

リノベーションとリフォームの違いを内部の方でも確認してみましょう。

リフォームでは、間仕切りなどを変更せずに、キッチンの入れ替えや壁紙の張り替え、塗装などを行います。

リノベーションでは、植松町の家を例にしてみますと、狭い間取りを変更して、実際に広くするほか、窓の位置や大きさを変更して、視覚的にも広く感じさせるようにします。間仕切りを取り除くと構造に影響が出ますので、耐力壁の移設や強化など、構造計算をやり直します。併せて制振ダンパーなどを設置して、より地震に強くなるようにします。

また、新しい機能として、トレッドミルを置いた洗面室や、サウナを入れた浴室などを併設して、さながらスポーツジムを提案したり、それに伴う裏方のランドリールームと屋根付きの物干場を増築しました。

こうした新しい生活を想像することで、今までの現実から高い理想へとアップグレードするのです。

リノベーションとリフォームの違い

リノベーションとリフォームの違いは何かと聞かれることもあります。

リノベーションした植松町の家を例にして見てみますと、まず外観ではどこまで残すか、取り除くか、付け加えるかも含めて、機能を上げることを目的に変更をかけていきます。

例えば、ガレージが狭くて空間も低く使いづらかったので、その部分を撤去+新築して、使い勝手の向上と倉庫やランドリーから直接出れる屋根付きのデッキスペースを付加しました。

写真にあるように、内玄関側の駐輪スペースなどの機能向上なども行なっています。 さて一方、リフォームでは外壁を塗り替えるくらいでしょうか。

新築そっくりにはなるかもしれませんが、現実は変わらないのです。

リノベ実践2

人・建築設計所は、2023年4月に新事務所をリノベーションでオープンしました。

今日は前回の物件探しから、いよいよリノベの準備に入る回です。
ちょうど今、大きな物件が動いており、更新が遅れてました!汗

さて、この空間が面白いということと、リノベ自由にOKということで決めたこの物件。
大家さんとなる建築写真家で有名な上田明さんとは、北海道釧路市のPLEAインフォメーションセンターの完成写真の撮影で出会い、浜松出身ということで、釧路から戻ってからは頻繁にお会いするようになり27年ものお付き合い。
なんとご子息の新築住宅の設計もさせていただきました。

さて、まずは物件のチェックです。これを「インスペクション」と言って、まずは目視でチェックします。これができる人を「インスペクター」と呼んでいます。

私も、もちろん専門家である一級建築士ですので、インスペクションを行えます。
余談ですが、大手インスペクションの企業様から、東海地区をまとめるインスペクターとしてお願いできないかとの話があったのですが、契約書に書かれている事項があまりにも身勝手だったので、お断りしたこともありました。

さてさて、この物件での一番の問題は、衛生設備関連でした。直す方法はあるのですが、本来こうした修繕は大家さんの負担となります。
とはいえ、全体にリノベをかけていくので、店子側での内装工事で直せるのではないかと考えました。

まずは大きさをチェックして、図面作成です。
今回は自分で内装を行うとしたので、材料費、家具費の算出と、専門業者へ依頼する部分の材工の費用を大まかに計算する必要があるので、図面はとても大切です。

(つづく)

木架構

人・建築設計所では、大規模木造(都市木造)の設計を行っています。

先日、野沢正光さんの記事でも触れましたが、大断面集成材を使った大規模木造のシステム化を開発していたことから、私どもは大規模な木造というのに対しての知識が揃っています。

そのような事務所であるため、一般的な設計事務所では取り組めないような、こうした設計もできるのです。

実は、いま現在も大規模木造の計画が進んでおります。

昨日ですが、木架構の打ち合わせを行い、プレカット加工会社が接合金物のカタログを持ってきてくださいました。
この中に実例が載っているものがあり、その1件が私どもの設計した物件が載っているとは、まさか思いもしてなかったと思います。

浜松市の設計事務所の中でも、全国的にも、先進的な設計事務所であることは、間違いない事実です。


そんな設計事務所が、住宅でも非住宅でもお役に立ちたいと思っています。
ハウスメーカーや、建設会社に不信感を持ってしまったお客様もご相談に乗ります。

リノベ実践1

人・建築設計所は、2023年4月に新事務所をリノベーションでオープンしました。

2022年11月にスタートした新事務所の計画は、まずは物件探しです。
土地の購入、建物や部屋の賃貸、シェアオフィスなど、検証しながら進めました。
例えば、土地の購入では、建物の建設に時間がかかりすぎるので、プレハブのオフィスを置いて、徐々に新築するなど検討していました。

そんなことで2ヶ月ほど検索や問い合わせなど具体的に進めていたところ、2023年1月に旧知の建築写真家の上田明さんに、Macの具合を見て欲しいと言われて出かけ、ふと頭に「スタジオの2階が以前事務所で貸してた」ということを思い出しました。
ダメもとで「上の事務所って空いてる?」と聞くと、空いてるというので、早速見せてもらいました。

荷物こそあれ、空間が面白いし、何よりリノベの許可も得られたので、これはお願いするしかないと確信しました。
(つづく)

モデュロール

毎週木曜日は、書棚から本を紹介します。

その記念すべき1回目の本は、ル・コルビュジェ著で吉阪隆正が訳した書籍です。
真っ黒な装丁のこの本は、SD選書という鹿島出版会の建築専門書。
270以上もあるSD選書の中でも、最も有名な本かもしれません。

建築を学ぶ学生は、教科書で必ずこの書籍のことを学びますが、実際にその本を読んだことのある学生は、一握りもいないかもしれません。

という私も、学生時代に購入し、かなり端折って斜め読みしていました。
特に大切な部分はこの辺り。
黄金比とフィボナッチ数列、人体や生物に隠された数列です。

さて、代表の髙橋はフィボナッチ数列が、その数とその前の数を足していくという特性を利用して、インフィル(内装)・システムの開発を行いました。
その開発したシステムを東京・三田の日本建築学会本部の入る建築会館で記者発表をしました。
そのことが載っている書籍もどこかにありますが、またそのうちに紹介します。

さてさて、そんな記者発表もあって、その原点となったモデュロールについて記事を書くというので、この書籍を貸してありました。

返却して来たメモの中に「長らく」と書いてあるように、下手すると20年以上も貸してあったような…。
夏みかんピール美味しかったんで、許してあげますよ。笑

建築が人をアフォードする

アフォードという言葉は、耳慣れないかもしれません。

辞書によると「余裕がある、買う余裕がある、持つ余裕がある、差しつかえない、与える、供給する、産する、(…を)与える」とのこと。

このなかでは、一番最後の「〜を与える」が一番近い意味ですが、、、

「建築が人をアフォードする」というのは、建築によって人は、ココロも身体も大きな影響を受けるということ。
大切な人をどのような環境に置きたいか、何を求めて設計するのか。
このことを忘れて、「虚勢のようなデザインや見てくれ」にうつつを抜かしてはならないと考えます。

親戚の大工に頼んで建てた家が年中暗く、基礎もボロボロになって来て、精神的に苦しくなったお客様。デザイン系設計事務所に頼んで、あちこちの雨漏りに苦しんでるお客様。溢れる荷物の量に苦しんでいるお客様。様々な悩みを抱えて来たお客様を私どもでは建築で助けて来ました。

建築でアフォードするという設計思想は、住宅にとどまらず、作業環境を考える工場や事務所、店舗でも求められます。

またもちろん、学習環境を考える学校、児童福祉施設、医療、高齢者福祉施設などの設計にも、共通した設計コンセプトです。

たとえば、木造の体育館に太陽熱を利用した床暖房を取り入れました。
南アルプスの真冬でも、ヒートショックが少なく、筋肉の緊張がゆるみ、そのため安全な建築となりました。

真夏に劣悪な環境となるクリーニング工場に、自然エネルギーを使ったパッシブ換気と、機械を使ったアクティブ換気・冷房・送風の効率よい組み合わせで、作業効率の高い環境をつくりました。

この工場には全国から見学者がお見えになり、体感された方からの依頼で、温熱改修のサポートもしております。

こうした考え方の原点となっているのは、東京藝術大学名誉教授・奥村昭雄氏のところに書生として置かせてもらったことから。

奥村昭雄さんを思い出す会(自由学園明日館にて)

奥村昭雄さんと毎晩のようにお酒を飲みながら、建築はもちろんのこと、あらゆる自然科学の根元を考えられるように伝承され、思考を訓練された結果であると思います。