建築が人をアフォードする

アフォードという言葉は、耳慣れないかもしれません。

辞書によると「余裕がある、買う余裕がある、持つ余裕がある、差しつかえない、与える、供給する、産する、(…を)与える」とのこと。

このなかでは、一番最後の「〜を与える」が一番近い意味ですが、、、

「建築が人をアフォードする」というのは、建築によって人は、ココロも身体も大きな影響を受けるということ。
大切な人をどのような環境に置きたいか、何を求めて設計するのか。
このことを忘れて、「虚勢のようなデザインや見てくれ」にうつつを抜かしてはならないと考えます。

親戚の大工に頼んで建てた家が年中暗く、基礎もボロボロになって来て、精神的に苦しくなったお客様。デザイン系設計事務所に頼んで、あちこちの雨漏りに苦しんでるお客様。溢れる荷物の量に苦しんでいるお客様。様々な悩みを抱えて来たお客様を私どもでは建築で助けて来ました。

建築でアフォードするという設計思想は、住宅にとどまらず、作業環境を考える工場や事務所、店舗でも求められます。

またもちろん、学習環境を考える学校、児童福祉施設、医療、高齢者福祉施設などの設計にも、共通した設計コンセプトです。

たとえば、木造の体育館に太陽熱を利用した床暖房を取り入れました。
南アルプスの真冬でも、ヒートショックが少なく、筋肉の緊張がゆるみ、そのため安全な建築となりました。

真夏に劣悪な環境となるクリーニング工場に、自然エネルギーを使ったパッシブ換気と、機械を使ったアクティブ換気・冷房・送風の効率よい組み合わせで、作業効率の高い環境をつくりました。

この工場には全国から見学者がお見えになり、体感された方からの依頼で、温熱改修のサポートもしております。

こうした考え方の原点となっているのは、東京藝術大学名誉教授・奥村昭雄氏のところに書生として置かせてもらったことから。

奥村昭雄さんを思い出す会(自由学園明日館にて)

奥村昭雄さんと毎晩のようにお酒を飲みながら、建築はもちろんのこと、あらゆる自然科学の根元を考えられるように伝承され、思考を訓練された結果であると思います。