モデュロール

毎週木曜日は、書棚から本を紹介します。

その記念すべき1回目の本は、ル・コルビュジェ著で吉阪隆正が訳した書籍です。
真っ黒な装丁のこの本は、SD選書という鹿島出版会の建築専門書。
270以上もあるSD選書の中でも、最も有名な本かもしれません。

建築を学ぶ学生は、教科書で必ずこの書籍のことを学びますが、実際にその本を読んだことのある学生は、一握りもいないかもしれません。

という私も、学生時代に購入し、かなり端折って斜め読みしていました。
特に大切な部分はこの辺り。
黄金比とフィボナッチ数列、人体や生物に隠された数列です。

さて、代表の髙橋はフィボナッチ数列が、その数とその前の数を足していくという特性を利用して、インフィル(内装)・システムの開発を行いました。
その開発したシステムを東京・三田の日本建築学会本部の入る建築会館で記者発表をしました。
そのことが載っている書籍もどこかにありますが、またそのうちに紹介します。

さてさて、そんな記者発表もあって、その原点となったモデュロールについて記事を書くというので、この書籍を貸してありました。

返却して来たメモの中に「長らく」と書いてあるように、下手すると20年以上も貸してあったような…。
夏みかんピール美味しかったんで、許してあげますよ。笑

建築が人をアフォードする

アフォードという言葉は、耳慣れないかもしれません。

辞書によると「余裕がある、買う余裕がある、持つ余裕がある、差しつかえない、与える、供給する、産する、(…を)与える」とのこと。

このなかでは、一番最後の「〜を与える」が一番近い意味ですが、、、

「建築が人をアフォードする」というのは、建築によって人は、ココロも身体も大きな影響を受けるということ。
大切な人をどのような環境に置きたいか、何を求めて設計するのか。
このことを忘れて、「虚勢のようなデザインや見てくれ」にうつつを抜かしてはならないと考えます。

親戚の大工に頼んで建てた家が年中暗く、基礎もボロボロになって来て、精神的に苦しくなったお客様。デザイン系設計事務所に頼んで、あちこちの雨漏りに苦しんでるお客様。溢れる荷物の量に苦しんでいるお客様。様々な悩みを抱えて来たお客様を私どもでは建築で助けて来ました。

建築でアフォードするという設計思想は、住宅にとどまらず、作業環境を考える工場や事務所、店舗でも求められます。

またもちろん、学習環境を考える学校、児童福祉施設、医療、高齢者福祉施設などの設計にも、共通した設計コンセプトです。

たとえば、木造の体育館に太陽熱を利用した床暖房を取り入れました。
南アルプスの真冬でも、ヒートショックが少なく、筋肉の緊張がゆるみ、そのため安全な建築となりました。

真夏に劣悪な環境となるクリーニング工場に、自然エネルギーを使ったパッシブ換気と、機械を使ったアクティブ換気・冷房・送風の効率よい組み合わせで、作業効率の高い環境をつくりました。

この工場には全国から見学者がお見えになり、体感された方からの依頼で、温熱改修のサポートもしております。

こうした考え方の原点となっているのは、東京藝術大学名誉教授・奥村昭雄氏のところに書生として置かせてもらったことから。

奥村昭雄さんを思い出す会(自由学園明日館にて)

奥村昭雄さんと毎晩のようにお酒を飲みながら、建築はもちろんのこと、あらゆる自然科学の根元を考えられるように伝承され、思考を訓練された結果であると思います。

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